辞令が出てすぐに突きつけられる、大きな決断があります。「単身赴任にするか、家族で帯同するか」。これには明確な正解がなく、同じ会社・同じ家族構成でも、下す決断は家庭によってまったく違います。
私自身、この決断を何度も経験し、あるときは帯同、あるときは一時的に単身赴任という選択をしました。どちらにも後悔した瞬間と、選んでよかったと思う瞬間があります。今回は、「どちらが正解か」ではなく、「自分たちの場合はどちらが合っているか」を考えるための判断軸を整理しました。
まず確認したい、会社制度の前提条件
判断軸を考える前に、そもそも選べる余地があるのかを確認しておく必要があります。
- 単身赴任手当・住宅手当の有無と金額
単身赴任を選んだ場合の手当額、帯同した場合の住宅補助額を具体的に把握しておきましょう。この金額差だけで、実質的な選択肢が絞られてしまうことも珍しくありません。 - 帰省交通費の補助があるか
単身赴任を選ぶ場合、月に何回分の帰省交通費が会社負担になるのかは、家族が離れて暮らす上での生活の質に直結します。 - そもそも帯同・単身赴任を選べるのか
社宅の都合や勤務形態によっては、会社側からどちらかを事実上指定されるケースもあります。まずは人事に確認し、「選べる前提」なのかどうかをはっきりさせておくことが出発点です。
転勤族|帯同or単身の判断軸
判断軸①:子どもの年齢・学校のタイミング
子どもがいる家庭にとって、一番大きな判断材料になりやすいのがこの軸です。
■受験や進級の節目に重なっていないか
中学・高校受験を控えている時期、進級・卒業の直前など、学校生活の節目と重なる場合は、単身赴任を選んで子どもの環境を変えない家庭が多い印象です。
■未就学〜小学校低学年は、比較的環境の変化に強
転校記事でも触れましたが、年齢が低いほど新しい環境に馴染むスピードは早い傾向があります。節目を気にしすぎなくても良いタイミングであれば、帯同のハードルは下がります。
■本人の意思を確認する
特に小学校高学年以降は、子ども自身の意思を無視できない年齢です。「転校してでもついていきたいか」「今の学校に残りたいか」を、家族会議の議題にのせることも大切です。
転校そのものへの不安や学区選びについては、こちらの記事で詳しくまとめています。

判断軸②:配偶者の仕事・キャリア
配偶者(多くの場合は妻側)の仕事をどうするかも、大きな分岐点です。
■正社員・キャリア継続を優先したいか
今の仕事を続けたい、キャリアを中断したくないという意思が強い場合は、単身赴任を選んで配偶者が現職に残る家庭も多いです。
■帯同後の働き方をどうするか
帯同を選ぶ場合、転職・派遣・在宅ワークなど、働き方を見直す必要が出てきます。あらかじめどんな選択肢があるかを知っておくと、帯同後の「仕事をどうしよう」という焦りを減らせます。

判断軸③:家族がどれくらい離れて暮らすことに耐えられるか
これは数値化しにくいですが、実際にはかなり重要な軸です。
■単身赴任側の孤独感
一人暮らしに慣れている人もいれば、家族と離れること自体が強いストレスになる人もいます。
■残された家族側の負担
配偶者が単身赴任になると、家事・育児・地域での対応すべてを一人で担うことになります。実家のサポートが得られるかどうかも、現実的な負担感を大きく左右します。
■夫婦のコミュニケーション頻度・スタイル
日常的にこまめに連絡を取り合える関係か、顔を合わせないと意思疎通が難しくなるタイプかによっても、向き不向きが分かれます。
判断軸④:トータルで見たお金の違い
単身赴任と帯同、どちらが金銭的に有利かは一概には言えません。
| 項目 | 単身赴任の場合 | 帯同の場合 |
|---|---|---|
| 住居費 | 二重生活(社宅+元の家)になるケースが多い | 引っ越し費用・初期費用がかかるが住居は1つ |
| 帰省・交通費 | 定期的な帰省費用が発生 | 基本的に発生しない |
| 配偶者の収入 | 継続しやすい | 転職・離職で変動する可能性 |
| 生活費 | 二重生活で割高になりやすい | 世帯をまとめやすい分、効率化しやすい |
会社の手当内容によって損得は大きく変わるため、「なんとなく単身赴任の方がお金がかかりそう」といった印象だけで判断せず、実際の手当額とシミュレーションをもとに比較するのがおすすめです。
単身赴任・帯同、それぞれのメリット・デメリット
単身赴任のメリット・デメリット
メリット
- 子どもの転校がなく、学校生活を継続できる
- 配偶者が仕事・キャリアを継続しやすい
- 住み慣れた地域のコミュニティ(友人、実家のサポート)を維持できる
デメリット
- 家族が離れて暮らす期間のコミュニケーションコストがかかる
- 残された配偶者の家事・育児の負担が増える
- 二重生活による金銭的な負担が発生しやすい
帯同のメリット・デメリット
メリット
- 家族で同じ時間を過ごせる
- 新しい土地での暮らしを家族で共有できる
- 二重生活にならない分、生活コストをまとめやすい
デメリット
- 子どもの転校、配偶者の仕事の見直しが必要になる
- 新しい土地での人間関係をゼロから作り直す必要がある(孤独を感じやすい時期も)
- 転勤のたびに同じ負担が繰り返される
帯同を選んだ後の孤独感との向き合い方については、こちらの記事もあわせてご覧ください。

赴任期間の見通しによっても判断は変わる
■短期(1〜2年)と分かっている場合
子どもの転校や配偶者の離職までは踏み切りにくく、単身赴任を選ぶ家庭が多い傾向にあります。
■長期、または期間が不透明な場合
「いつ戻れるか分からない」状態で家族がずっと離れて暮らすのは、精神的な負担が蓄積しやすくなります。長期が見込まれる場合は、帯同を選ぶ家庭が増える印象です。
■今後も転勤が続く見込みがあるか
今回だけでなく、今後も数年おきに転勤が続きそうな会社・職種であれば、「毎回単身赴任にするのか」「どこかのタイミングで帯同に切り替えるのか」という長期的な方針を、早めに夫婦で話し合っておくと後々の決断がスムーズになります。
決めたら、次にやること
単身赴任か帯同か決まったら、それぞれ次のアクションに進みましょう。
帯同を選んだ場合
住まい探し、子どもの転校準備、配偶者の仕事の整理など、やることが一気に増えます。辞令後のチェックリストも活用してください。
単身赴任を選んだ場合
赴任先の住まい(社宅・マンスリーマンション等)の手配、帰省ペースの計画、残る家族のサポート体制の確認から始めましょう。
こちらの記事にWEB上でも、印刷しても使えるチェックリストをご用紙しました。ぜひブックマークしてご活用ください。

まとめ|「正解」ではなく「今の自分たちに合う選択」を
単身赴任か帯同か、という問いに絶対的な正解はありません。
- まずは会社の制度(手当・補助)を確認する
- 子どもの年齢・学校のタイミングを確認する
- 配偶者の仕事・キャリアの意向を確認する
- 家族の性格・コミュニケーションスタイルを考慮する
- お金は印象ではなく実際のシミュレーションで比較する
- 赴任期間の見通しも考慮に入れる
一度決めた選択が、次の転勤でも同じとは限りません。そのときどきの家族の状況に合わせて、都度見直していくくらいの気持ちで向き合ってみてください。



